日本外科感染症学会

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日本外科感染症学会特別セミナー情報


開催予定セミナー

第8回 日本外科感染症学会特別セミナー開催のご案内

名称 日本外科感染症学会特別セミナー  Healthy DiscuSSIon 周術期感染対策セミナー『第8回 SSIケアバンドル 次なる一手』
日時 2023年9月4日(月) 18:30~20:00
開催形式 ZOOMによるWebセミナー
プログラムなど詳細・お申し込み
問い合わせ先 事務局office@gekakansen.jp

過去開催セミナー

第7回 日本外科感染症学会特別セミナー開催のご案内

名称 日本外科感染症学会特別セミナー  Healthy DiscuSSIon 周術期感染対策セミナー『第7回 周術期感染対策 今押さえるべき三つの領域』
日時 2022年11月29日(火) 18:30~20:00
開催形式 ZOOMによるWebセミナー
プログラムなど詳細・お申し込み
問い合わせ先 事務局office@gekakansen.jp

第6回 日本外科感染症学会特別セミナー開催のご案内

名称 日本外科感染症学会特別セミナー  Healthy DiscuSSIon 周術期感染対策セミナー『第6回 今さら聞けない周術期感染症対策の基本』
日時 2022年8月31日(水) 18:30~20:00
開催形式 ZOOMによるWebセミナー
プログラムなど詳細・お申し込み
問い合わせ先 事務局office@gekakansen.jp

第5回 日本外科感染症学会特別セミナー開催のご案内

名称 日本外科感染症学会特別セミナー  Healthy DiscuSSIon 周術期感染対策セミナー『第5回 Infection Control Teamが是非手に入れたい知識』
日時 2022年6月8日(水) 18:30~20:15
開催形式 ZOOMによるWebセミナー
プログラムなど詳細・お申し込み
問い合わせ先 事務局office@gekakansen.jp

第4回 日本外科感染症学会特別セミナー開催のご案内

名称 日本外科感染症学会特別セミナー  Healthy DiscuSSIon 周術期感染対策セミナー『第4回 周産期手術における感染対策』
日時 2022年3月2日(水) 18:30~20:00
開催形式 ZOOMによるWebセミナー
プログラムなど詳細・お申し込み
問い合わせ先 事務局office@gekakansen.jp

第3回 日本外科感染症学会特別セミナー開催のご案内

名称 日本外科感染症学会特別セミナー  Healthy DiscuSSIon 周術期感染対策セミナー
『第3回 整形外科における周術期感染対策』
日時 2021年11月16日(火) 18:30~20:00
開催形式 ZOOMによるWebセミナー
プログラムなど詳細・お申し込み
問い合わせ先 事務局office@gekakansen.jp

第2回 日本外科感染症学会特別セミナー開催のご案内

名称 日本外科感染症学会特別セミナー  Healthy DiscuSSIon 周術期感染対策セミナー
『第2回 周術期感染対策とICT活動』
日時 2021年9月28日(火) 18:30~20:40
開催形式 ZOOMによるWebセミナー
プログラムなど詳細・お申し込み
問い合わせ先 事務局office@gekakansen.jp

第1回 日本外科感染症学会特別セミナー開催のご案内

名称 日本外科感染症学会特別セミナー  Healthy DiscuSSIon 周術期感染対策セミナー
『第1回 周術期感染対策と病院マネジメント』
日時 2021年7月20日(火)18時半~20時
開催形式 ZOOMによるWebセミナー
プログラムなど詳細・お申し込み
問い合わせ先 事務局office@gekakansen.jp

第十三回 日本外科感染症学会特別セミナー in Tokyo

名称 知って得する感染症~外科感染症のUp To date 2018~
日時 平成30年3月10日(土)14時~17時(受付開始13時)
会場 ベルサール神田
〒101-0053 東京都千代田区神田美土代町7 住友不動産神田ビル2・3F
TEL:03-5297-0230 プログラムなど詳細・お申し込み
申込方法 参加ご希望の方は、E-MAILまたはFAXにてお申込みください。★参加費無料★
【E-MAIL】ec-desk37@or.knt.co.jp
 住所、氏名、施設名及び診療科、電話番号をご明記のうえ送信ください。
【FAX】03-6891-9406
 プログラム裏面の参加申込票にご記入のうえ送信ください。
問い合わせ先 日本外科感染症学会特別セミナー事務局(近畿日本ツーリスト内)
TEL:03-6891-9330(受付時間/平日10:00~17:00)
E-mail:ec-desk37@or.knt.co.jp

第十二回 日本外科感染症学会特別セミナー in Tokyo

名称 知って得する感染症~外科感染症のUp To date 2017~
日時 平成29年3月25日15時~18時(受付開始14時)
会場 秋葉原コンベンションホール
〒101-0021 東京都千代田区外神田1-18-13
TEL:03-5297-0230 プログラムなど詳細・お申し込み
問い合わせ先 日本外科感染症学会特別セミナー事務局
(メディカルトリビューン内)
TEL:03-3239-7273
E-mail:jssi-seminar@medical-tribune.co.jp

Q&A(大久保先生)

〈質問〉ノロウイルス、クロストリジウム・ディフィシル(CD)のアウトブレイク時のスタッフの手洗いをどのように心がければよいでしょうか
(解答)クロルヘキシジングルコネート(CHG)は、わが国では粘膜への使用はできません。また、眼毒性、耳毒性もありますので、頭部への使用は控えてください。ご質問のごとく、頸部の消毒に関しては特に制限はする必要はないです。0.5%を超える濃度のCHGを使用されても構いません。カテーテル刺入部に使用する目的でスポンジドレッシングもしくはジェルパッドにCHGを含有した製品が使用されています。
〈質問〉高カロリー輸液のカテーテル刺入部に対するポビドンヨードゲル(イソジンゲル®)の塗布について
(解答)カテーテル刺入時の皮膚消毒には0.5%を超えるクロルヘキシジンアルコールにて消毒します。消毒した後に刺入部にさらに別の消毒薬を塗布する必要はありません。フィルムドレッシングで覆った場合には、ゲルのために皮膚刺入部の観察ができなくなります。カテーテルの固定も不十分となります。皮膚の軟化の懸念もあります。したがってカテーテル刺入部皮膚にはポビドンヨードゲルは塗布しません。透析用のカテーテル刺入部の評価では、ポビドンヨードゲル塗布群の方が感染率が少なかったとする治験がありますので、透析に関するガイドラインではカテーテル刺入部皮膚にポビドンヨードゲルの塗布が推奨されています。

Q&A(針原先生)

〈質問〉清潔手術における術野の汚染菌の由来は
(解答)① 患者皮膚の常在菌、通過菌②手術室の落下細菌③手術器具の汚染④手術スタッフからの汚染などが考えられます。比率としては①の患者皮膚の菌が非常に大きな割合を占め②-④はゼロではないが、かなり少ないと考えるのが適当です。
〈質問〉逆行性感染と診断できれば、SSIではない。
(解答)ドレーンの逆行性感染と診断できた場合には、術中の汚染が原因ではないので、SSIには含まれません。なお、ドレーンの逆行性感染と遺残膿瘍との鑑別は必ずしも容易ではありませんが、発症時期、ドレーン造影の所見、治り方などを考慮して、総合的に判断することになります。外科医ならばある程度判定可能と思います。

Q&A(畑先生)

〈質問〉大腸手術前の術前処置として下剤のみではなく下剤+経口抗菌剤の方がよいことは理解できました。ではここで経口抗菌薬はどのような抗菌薬でどれくらいの量で何日間投与するべきなのか具体的に教えてください。
(解答)術前経口抗菌薬については、本邦の" 術後感染予防抗菌薬適正使用のための実践ガイドライン"(日本化学療法学会・日本外科感染症学会)ではカナマイシン+メトロニダゾールが記載されており具体的な方法としては、以下のような報告がなされています。
① 術前日15時に下剤、手術13時間前と9時間前に、それぞれ1回あたり、カナマイシン(250)x4cap+メトロニダゾール(250)x3Tを内服
Ann Surg. 2016 ;263(6) :1085 PMID:26756752
②術前日11時に下剤、14時、15時、19時に、それぞれ1回あたり、カナマイシン(250)x2cap+メトロニダゾール(250)x2Tを内服
Dis Colon Rectum. 2013 ;56(10):1149 PMID: 24022532
などがあります。
〈質問〉創閉鎖前にヨード水溶液を使用する場合、何%程度が良いでしょうか。
(解答)10%水溶液で60秒洗浄する方法や、0.35%で3分創部を浸した後に2Lの生食で洗浄する方法を用いた臨床試験が報告されていますが、いまのところ何%のPVP-I溶液が良いかの結論は出ていません。

Q&A(大毛先生)

〈質問〉重症例が少ない日本では、C. difficile感染症でメトロニダゾールが第一選択とのことですが、バンコマイシンは不要でしょうか
(解答)再発例などバンコマイシンが必要な状況もあります。両剤を使用できるようにした方が良いと思います。
〈質問〉C. difficile感染症で使用するプロバイオティクスは,種類によって効果に違いはありますか
(解答)効果を比較した試験は殆ど無く、プロバイオティクス製剤による違いはないと考えます。

第十一回日本外科感染症学会特別セミナー in Sendai

名称 知って得する感染症~外科感染症のUp To date2016~
日時 平成28年3月12日13時~16時(受付開始12時)
会場 仙台市情報・産業プラザ
AER 5階「多目的ホール」
仙台市青葉区中央1丁目3番1号 プログラムなど詳細
問い合わせ先 日本外科感染症学会特別セミナー事務局
(メディカルトリビューン内)
TEL:03-3239-7273
E-mail:jssi-seminar@medical-tribune.co.jp

Q&A(大久保先生)

〈質問〉CHG-ALは、頸部~頭部にかけては使用禁忌となっていたと思います。当院は、内頚からのCVカテーテル挿入が多いので使用しても良いでしょうか。
(解答)クロルヘキシジングルコネート(CHG)は、わが国では粘膜への使用はできません。また、眼毒性、耳毒性もありますので、頭部への使用は控えてください。ご質問のごとく、頸部の消毒に関しては特に制限はする必要はないです。0.5%を超える濃度のCHGを使用されても構いません。カテーテル刺入部に使用する目的でスポンジドレッシングもしくはジェルパッドにCHGを含有した製品が使用されています。

Q&A(針原先生)

〈質問〉SSI防止対策の実施後にデータを取っているでしょうか。有効なSSI防止対策があったら、紹介をお願いします。
(解答)NTT東日本関東病院では1998年11月から継続的にSSIサーベイランスを行っています。
この間に様々な対策を導入してきましたが、継続的にSSIサーベイランスを行って、対策導入前後のSSI発生率の変化を確認しています。
しかしながら、SSI発生には多くの多様な因子が関与しますので、これを守れば良いというような単一の対策の導入で有意にSSIを減少するのは困難です。
Best PracticeやBundle approachと表現されますが、よいと思われる対策を束にして導入し、導入した対策をきちんとすべて実施していく対応が、SSIを減少させるためには重要と考えます。
〈質問〉直腸癌術後の予防的抗菌薬投与で、24時間投与の72時間投与に対する非劣性が証明できなかったということは現状では72時間投与を行った方がよいと考えてよろしいのでしょうか
(解答)御指摘のように、日本外科感染症学会の行ったRCTでは、胃全摘や胆道再建を伴わない肝切除では、予防的抗菌薬24時間投与の72時間投与に対する非劣性が証明されましたが、直腸がん手術では証明できませんでした。
欧米では直腸がん手術でも予防的抗菌薬24時間投与を推奨していますが、欧米でのRCTとの結果の違いの理由として、術前腸管前処置の違いが挙げられています。すなわち今回の本邦のRCTでは機械的前処置のみで、経口抗菌薬投与による前処置が行われることが少なかったために、24時間投与の同等性が示せなかったとの考え方です。
以上の理由から、今回発表される予防的抗菌薬実践ガイドラインでは、直腸手術において、経口抗菌薬投与による前処置が行われない場合には予防的抗菌薬48-72時間投与、経口抗菌薬投与による前処置が行われる場合には24時間投与が推奨されています。

Q&A(畑 先生)

〈質問〉創洗浄にポピドンヨードを使用する点ですが、宿主の免疫細胞を殺してしまう可能性はないでしょうか?
(解答)創面に消毒薬を使用する場合に最も危惧されることは、正常な組織に対して障害を与えることだと言われてきました。しかし、今回のCDCガイドラインやその他のガイドラインには、ヨード製剤での創洗浄が推奨されています。
ヨード製剤での創洗浄については,2点理解しておくことが必要と思います。
1.ポビドンヨード製剤の界面活性剤が変更されている。 以前のポビドンヨード製剤には,界面活性剤として組織障害性のあるポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルが添加されていましたが、 現在は,組織傷害性の無いラウロマクロゴールに変更されており、ポビドンヨード製剤の組織障害性についてはこれまでとは分けて考える必要があると思います。
2.消毒薬で創洗浄をする場合,(否定できない)組織障害のデメリットと、(考えられる)感染予防効果のメリットの両方を考えた上で評価をする必要があると思います。これまでの報告では、感染予防効果のメリットが大きく、組織障害のデメリットは大きくないとの報告が多くあります。
Meta-analysis of intraoperative povidone-iodine application to prevent surgical-site infection. Br J Surg. 2010 97(11):1603-13. PMID:20878943
これらを理解した上で、実臨床で使用するかどうかを判断して頂くのがよいと思われます。

Q&A(大毛先生)

〈質問〉CD腸炎でメトロニダゾールの内服を10日間行い、その後の再検査でトキシン陽性だった場合、再治療は必要ですか
(解答)治療後でもトキシン、もしくはGDH(CD抗原)が陽性になることがあります。その時点で腸炎症状が軽快していれば、検査の結果に関わらず治療終了で良いと考えます。言い換えれば、治療経過が良好であればその時点での検査は不要です。陰性確認の検査は推奨されていません。

第十回日本外科感染症学会特別セミナー in Kagoshima

名称 知って得する感染症~外科感染症のUp To date2015~
日時 平成27年11月21日14時~17時(受付開始13時)
会場 サンプラザ天文館
7階「ホール」
鹿児島市東千石町2-30-3F TEL 099-224-6639
プログラムなど詳細
問い合わせ先 日本外科感染症学会特別セミナー事務局
(メディカルトリビューン内)
TEL:03-3239-7273
E-mail:jssi-seminar@medical-tribune.co.jp

Q&A(大久保先生)

〈質問〉エボラウイルス感染、HIV感染に対して、消毒対応の解説をお願いいたします。
(解答)エボラウイルス感染の患者の体液や排泄物などの消毒には、次亜塩素酸ナトリウムやジクロルイソシアヌール酸ナトリウム顆粒が有効です。 また、金属製品にはグルタラールを用います。なお、アルコール(消毒用エタノール、70v/v%イソプロパノール)も使用できます。
エボラウイルスによる汚染物の消毒には5,000ppm次亜塩素酸ナトリウム溶液を使用し、眼に見える汚れが無いところには500ppm溶液を使用します。
エボラウイルス感染の患者は、嘔吐・下痢が激しく、大量のウイルスを排泄していると考えられますので、患者との接触時には、適切な個人防護具を着用しなければなりません。そして、使用後の防護具を脱ぐ際に感染する危険性が指摘されていますので、正しい防護具着脱手順を身につけておく必要があります。
エイズウイルスには、次亜塩素酸ナトリウムによる消毒と共に消毒用エタノールなどのアルコールの使用をお勧めいたします。

Q&A(針原先生)

〈質問〉消化器外科手術術後に、医師が創を開放して洗浄を行った場合、SSIにしていますか?
(解答)培養を提出していなければ、SSIと診断しています。
医師の脂肪融解との主張を受け入れるのは、培養が提出されていて、培養陰性または常在菌のみが検出された場合に限ります。
〈質問〉創部皮下にドレーンが挿入されていて、ドレーン浸出液の培養にて常在菌または腸球菌が検出された場合にはSSIにしていますか。
(解答)ドレーン浸出液の培養でどのような菌が検出されても、感染兆候がなければ、SSIとは診断しません。ドレーンを抜去してそのまま治癒すれば、問題ありません。もしドレーンの抜去後に創感染が起これば、その時点でSSIと診断します。

Q&A(畑 先生)

〈質問〉サージカルドレープは人工物を使用する手術でも有効性は証明されていませんか?
(解答)サージカルドレープは、術野に全体を覆う清潔な布(不織布)を指しますのでご質問は、インサイズドレープ(皮切部位に張り付けるフィルム状のもの)についてと考えます。
インサイズドレープの有効性については、大きな臨床試験は少なく、清潔手術・人工物使用手術も含めて、有効性が明らかになっているものは無いようです。
参考:Cochrane Database Syst Rev. 2013 Jan 31;1:CD006353.
Use of plastic adhesive drapes during surgery for preventing surgical site infection.
PMID:23440806

Q&A(大毛先生)

〈質問〉皮下ドレーンは有効でしょうか
(解答)A.皮下ドレーンを考慮する状況として、①汚染度が高くSSI発症リスクが高い症例、②高度肥満や腹壁瘢痕ヘルニア手術のような皮下の死腔が大きい症例、の2つが考えられます。いずれにおいても明確な回答は得られていません。最近52のスタディによるsystematic reviewが報告されました(Plast Reconstr Surg 2013;132:443-50)。多くの術式が含まれていますが、SSI予防効果は証明されませんでした。今後は下部消化管外科など術式を選んで、有効性を評価するスタディが必要と考えます。

第九回日本外科感染症学会特別セミナー in Nara

名称 知って得する感染症~外科感染症のUp To date2015~
日時 平成27年10月17日15時30分~18時(受付開始15時15分)
会場 奈良春日野国際フォーラム 甍~I・RA・KA~(旧奈良県新公会堂)
2階「第2会場」レセプションホール
奈良市春日野町101 TEL 0742-27-2630
プログラムなど詳細
問い合わせ先 日本外科感染症学会特別セミナー事務局
(メディカルトリビューン内)
TEL:03-3239-7273
E-mail:jssi-seminar@medical-tribune.co.jp

Q&A(針原先生)

〈質問〉縫合糸膿瘍をSSIとしないのはアレルギーが原因と考えられるからでしょうか。
(解答)SSIと判定されない縫合糸膿瘍はstitch abscessと表現されるもので、針の皮膚刺入部の周囲に限局した膿瘍のことです。一般的に縫合糸膿瘍といわれる創の中に縫い込んだ縫合糸(筋膜を縫合した縫合糸など)の感染はSSIに含まれます。
〈質問〉脳外科術後の細菌性髄膜炎はSSIになるのでしょうか。ドレーン感染はSSIになるのでしょうか。
(解答)手術中の細菌汚染によって起こったと考えられる細菌性髄膜炎は臓器/体腔SSIと判定されます。ドレーンの逆行性感染は手術中の細菌汚染が原因ではなく、術後管理の中で交差感染が原因で起こるものと考えられますので、SSIには含まれません。

Q&A(畑先生)

〈質問〉整形外科の分野になるのですが、人工股関節でドレーンを入れている患者さんの予防抗菌薬投与期間を教えてください。また、ステロイド・MTX服用患者は長めの方がい良いのでしょうか?
(解答)CDCガイドラインドラフトでは、
Q.1E
術後の抗菌薬投与に関して、閉創後はドレーンがあっても予防的抗菌薬は投与しない。(カテゴリー IA)
Q14. ステロイドや免疫抑制剤投与中の人工関節術
Q19.ドレーンが留置された人工関節術の患者でも術後の予防的抗菌薬は投与しない。(カテゴリー IA)となっています。
一方本邦の「術後感染予防抗菌薬適正使用のための実践ガイドライン, ドラフト版」では、ステロイドや免疫抑制剤、ドレーンの有無にかかわらず、インプラントのある整形外科手術では、24~48時間の投与を記載しています。
〈質問〉手術前後の入浴にクロルヘキシジンを用いることは、国内では適応外になることと思われますが、導入する場合注意すべき点を教えてください。
(解答)クロルヘキシジングルコン酸塩製剤は、手指消毒のみ適応の4%スクラブ製剤と、術野消毒に希釈して使用する5%製剤が代表的な製剤です。スクラブ製剤は手指消毒のみが適応であり、5%製剤は術野の消毒にも適応がありますが、眼、耳、粘膜などは禁忌とされています。したがって、シャワーに使用する場合は、適応外使用であること、眼・耳・粘膜などの禁忌部分に使用しないような注意が必要であり、同意書も必要と思われます。

Q&A(大毛先生)

〈質問〉創感染で創を開放している場合のシャワー浴は可能でしょうか?
(解答)よほど深い創でなければ,基本的に入浴は可能で,むしろ清潔や血流増加の観点から望ましいと考えます。本人が気にする場合は被覆材で密封すると良いでしょう。
〈質問〉心臓外科領域で抗菌薬の術野散布に関するエビデンスはありますか?
(解答)整形外科領域ではメタ解析が報告されています(J Neurosurg Spine 2014;21:974-83)。ただし解析に使用している論文はいずれも後方視的な検討で、エビデンスレベルは高くありません。

第八回日本外科感染症学会特別セミナー in Hiroshima

名称 知って得する感染症~外科感染症のUp To date2015~
日時 平成27年9月5日15時~18時(受付開始14時)
会場 三井ガーデンホテル広島 3階「白鳳」
広島市中区中町9-12
TEL 082-240-1131
プログラムなど詳細
問い合わせ先 日本外科感染症学会特別セミナー事務局
(メディカルトリビューン内)
TEL:03-3239-7273
E-mail:jssi-seminar@medical-tribune.co.jp

Q&A(大久保先生)

〈質問〉術前皮膚消毒や、穿刺部などをヨード→クロルヘキシジンの順で消毒する意味はありますか?
(解答)術前の術野皮膚消毒並びに穿刺部皮膚消毒、カテーテル刺入部皮膚消毒において、あらかじめポビドンヨードで消毒した後に、クロルヘキシジンで消毒する必要はありません。どちらか一方の消毒薬を使用して下さい。
〈質問〉プリオンハイリスク手術に使用した手術器械の洗浄に使用したスポンジは他の手術器械のものと区別するべきでしょうか?洗浄する場所(シンク)も分ける必要はありますか?
(解答)CJDプリオンの感染と診断されている患者及び疑いのある患者に使用した手術器械は、あらかじめ使用後に廃棄できる器械を使用して下さい。診断はされていないが、二次感染を防止する目的で洗浄に使用したスポンジは廃棄して下さい。
一般細菌汚染におきましてもスポンジを消毒処理することは不可能です。器械洗浄を行う場合には、ウォッシャーディスインフェクター(WD)を使用することが推奨されています。

Q&A(針原先生)

〈質問〉表層切開創SSIと深部切開創SSIと区別が難しい症例がありますが、どのように分けたらよいでしょうか。
(解答)切開創SSI(表層と深部を合わせて)と臓器/体腔SSIとの区別は重要で、その防止対策も異なるところがありますが、表層切開創SSIと深部切開創SSIとの区別はそれほど重要ではありません。
表層切開創SSIと深部切開創SSIとで迷うような症例は、表層切開創SSIとしてください。明らかに筋層まで感染が及んでいて迷うことのない症例を深部切開創SSIとしてください。実際には深部切開創SSIはごくわずかと思います。
〈質問〉JANISに参加していますが、集計結果のフィードバックに最長1年かかることがあるので、自施設で計算してもっと早くフィードバックしたいと考えています。その場合に手術時間のカットポイント値に関して、何を用いたらよいでしょうか。
(解答)SSI発生率リスク調整のためのリスクインデックスでは手術時間の75パーセンタイル値(手術時間の短い方から数えて75%目の手術時間)をカットポイントとします。最終的なJANISの手術時間(全集計結果から算出したもの)の提示は1年分を集計した後に行われるので、確かに1年後となってしまいます。ただし、この値が大きく変動することはありませんので、1年前のJANISの集計結果を参照するか、日本環境感染学会JHAIS委員会の集計結果を参照してください。どちらもホームページにて参照可能です。

Q&A(畑先生)

〈質問〉汚染手術の時にいつまで術後抗菌薬を投与すればよいか?
(解答)清潔・準清潔手術の時は抗菌薬は予防投与となり、術中のみの投与、あるいは術後24時間程度の投与が勧められています。一方、汚染手術の時は、治療投与となるため、予防投与と区別することが重要です。
治療投与は、疾患の種類、汚染の内容、重症度に応じて期間も変わります。治療に必要十分な期間投与しますが、およそ4~7日間とするガイドラインがあり、参考にできると思います。
1.
Clin Infect Dis. 2010 Jan 15;50(2):133-64.
Diagnosis and management of complicated intra-abdominal infection in adults and children: guidelines by the Surgical Infection Society and the Infectious Diseases Society of America.
PMID:20034345
〈質問〉抗菌縫合糸による耐性菌発生の問題はありませんか?
(解答)現在、トリクロサンが含有された抗菌縫合糸が使用されていますが、耐性菌が増加したとする報告はないようです。
2.
Int Wound J. 2011 Dec;8(6):556-66.
Antimicrobial sutures and prevention of surgical site infection: assessment of the safety of the antiseptic triclosan.
PMID: 21854548

Q&A(大毛先生)

〈質問〉MRSA保菌者に対するクロルヘキシジン浴は,どのように行いますか?
(解答)しばしば引用される文献では,バクトロバン軟膏による鼻腔除菌と平行して,術前5日間に渡って行います(NEJM 2010;362:9-17).しかし文献によって方法の詳細が異なっているのが現状で,本来は統一した方法での有効性評価が必要です(Am J Infect Contorl 2013;41:167-173).またクロルヘキシジンは粘膜への使用によりアナフィラキシーショックをきたす可能性があるため,首から下の使用に限ります.
〈質問〉埋没縫合でSSIがわかった時、どれだけ開創すべきか。一部か全部か。
(解答)感染を起こしている範囲は開創すべきと考えます。一部のみにとどめると、不良肉芽の除去が進まず、結果的に治療期間が長くなります。
〈質問〉創感染で開創した場合、入浴時のカバーは必要か。
(解答)開放創を清潔にする観点から、カバーは行わずシャワーを浴びるのが良いと考えます。ただし創が大きい場合や、患者が不安に思う場合はこの限りではありません。

第七回日本外科感染症学会特別セミナー in Kanazawa

名称 知って得する感染症~外科感染症のUp To date2015~
日時 平成27年3月21日15時~18時(受付開始14時)
会場 金沢商工会議所 1階「ホール」
金沢市尾山町9 番13号
TEL 076-263-1151
プログラムなど詳細
問い合わせ先 日本外科感染症学会特別セミナー事務局
(メディカルトリビューン内)
TEL:03-3239-7273
E-mail:jssi-seminar@medical-tribune.co.jp

Q&A(大久保先生)

〈質問〉血管内留置カテーテル挿入部位皮膚の消毒について
(解答)CDCは、以前は2%クロルヘキシジンの使用を推奨していましたが、最近では0.5%を超えるクロルヘキシジンアルコールの使用を推奨しています。
臨床試験で、0.5%のクロルヘキシジンアルコールではポビドンヨード製剤と有意差が出ませんでしたので、0.5%を超えるという表現になりました。
わが国では1.0%クロルヘキシジンアルコール製剤が発売されていますので、それのご使用をお勧めいたします。
文献:谷村久美、大久保憲. 血管内留置カテーテル挿入部位の皮膚消毒に関する検討. 環境感染誌 2010; 25(5): 281-285.
〈質問〉擦式アルコール製剤の形状やメーカーによる効果の差はありますか?
(解答)日常的に使用する範囲では、泡状、ジェル状、ローションなどの形状による効果の差を考える必要はありません。
メーカーによる違いは、アルコールの種類や濃度、配合されている生体消毒薬の有無及び種類、pH等により効果の違いはあります。そして、医薬部外品や雑品に分類されている薬剤ではなく、医薬品を使用するのが安心です。
また、配合されているエモリエント剤(保湿効果などの)の種類により、使用感は異なってきます。
〈質問〉酸性のアルコール製剤はどの様な場合に使用したらよいでしょうか?
(解答)通常の速乾性擦式アルコール製剤の代わりとして常時使用できます。皮膚が酸性に傾くことは言われていますが、それによる皮膚障害は報告されていません。
近年、酸性のアルコール製剤は、ノロウイルスに対して通常のアルコールに比較して効果が期待できるとして、宣伝されています。しかし、一般的にアルコール製剤はノロウイルスに対して効果は弱いため、ノロウイルスによる汚染が考えられる場合の手指衛生においては、流水と石けんによる丁寧な手洗い後に、補完的に使用することが推奨されます。

Q&A(針原先生)

〈質問〉SSIサーベイランスは、なかなか手間がかかりますが、どうしたらスムーズに導入できますか。
(解答)SSIサーベイランスを導入し、継続的に行っていくには、外科医にとっては、院内感染対策担当者(ICNなど)の協力が、また逆に、院内感染対策担当者(ICNなど)にとっては、外科医の協力が必要です。互いに協力して、情報収集、判定、入力に関する役割分担を行うことがよいと考えます。なお、データ入力とその解析にあたってはNISDM-SSI3などの入力支援ソフトの使用をお勧めします。NISDM-SSI3は日本環境感染学会JHAIS委員会が無償で提供しています。
〈質問〉術中のSSI防止対策では、優先順位の選定はどのように行ったのか、教えてください。
(解答)私ども施設ではSSI発生例を検討する外科医とICNとの合同カンファレンスを毎月1回行っています。SSI合同カンファレンスで協議の上、導入の容易な対策、効果のありそうな対策から導入しました。SSIサーベイランスを継続的に行っていますので、それぞれの対策導入によるSSI減少効果はその都度検討しました。
〈質問〉NISDM-SSI3の手術時間75パーセンタイル値のカットポイントやSIR算出のためのデータの毎年の更新はどのようにされるのですか。
(解答)入力支援ソフトNISDM-SSI3はデータ更新の機能を備えていますが、2012年の提供開始から現在まで、この機能は使用していません。更新用のCSVフォーマットを日本環境感染学会JHAIS委員会で作成して、ホームページからダウンロードできるような対策を考えたいと思います。

Q&A(畑先生)

〈質問〉抗菌薬の1h前使用というのは、入れ終わった方がよいのか、開始の事ですか?
(解答)手術時の予防投与については、皮切時に抗菌薬の血中濃度が高くなっていることが必要ですので、執刀の1h前から執刀までの間に投与を開始し、終了していることが望ましいと思われます。
〈質問〉予防的抗菌薬を72時間以上使うと耐性菌が増えるという報告があるが大腸の手術では、72時間の使用は可能ですか?
(解答)耐性菌を生まないことを優先するのであれば、海外のエビデンスに従って術後に投与しないという方法がよいと思われます。
本学会のRCTでは、直腸の手術において、本邦で通常行われている72時間投与に対して24時間投与でもSSIが増えないことを証明し、72時間投与を24時間投与に変えていくことを目的としていました。
しかし、24時間投与でもSSIが増えないとは言えなかったため、現時点では、72時間投与されている先生方に24時間投与でも十分だとは言えないという結果でした。
すでに、海外のガイドラインに従うなどして、72時間より短い投与で十分にSSIを低くできているのであれば、72時間に延長することを奨めるものではありません。
〈質問〉吸収糸の評価は?
(解答)抗菌縫合糸の効果については、有鉤であるという新しい知見も出てきており、現時点で結論を出すのは困難です。
吸収糸については、システマティックレビュー1)や日本の第II相試験などの結果2)から、効果は証明されていないのが現状です。
1)World J Gastrointest Surg 2014 December 27; 6(12): 241-247
2)日外会誌113 臨時増刊号(3):45-46,2012

Q&A(大毛先生)

〈質問〉MRSA保菌者に対するクロルヘキシジン浴は,どのように行いますか?
(解答)しばしば引用される文献では,バクトロバン軟膏による鼻腔除菌と平行して,術前5日間に渡って行います(NEJM 2010;362:9-17).しかし文献によって方法の詳細が異なっているのが現状で,本来は統一した方法での有効性評価が必要です(Am J Infect Contorl 2013;41:167-173).またクロルヘキシジンは粘膜への使用によりアナフィラキシーショックをきたす可能性があるため,首から下の使用に限ります.
〈質問〉閉創時の手術器械交換は必要ですか?
(解答)消化管吻合などに使用した手術器械は汚染度が高く,創閉鎖の際に交換することが望ましいと考えます.ただし複数の術中感染対策を行った結果,手術部位感染発症率が低下したという報告は多いものの,器械交換単独の有効性を示す報告はないと理解しています.
〈質問〉皮下ドレーンの適応,有効性について教えて下さい
(解答)皮下ドレーンの留置を考慮する状況は二つあります.一つは高度汚染創,もう一つは高度肥満例です.その有効性を示すエビデンスレベルは高くありません.肥満例での使用を想定した帝王切開での皮下ドレーン留置に関するメタ解析では,スタディにより大正症例の設定が異なるため,結論に至っていません(Cochrane Database 004549,2010).

第六回日本外科感染症学会特別セミナー in Tokyo

名称 知って得する感染症~外科感染症のUp To date2014~
日時 平成26年11月15日15時~18時(受付開始14時)
会場 浅草橋 HULIC HALL「ヒューリックホール」
東京都台東区浅草橋1-22-16 ヒューリック浅草橋ビル2階
TEL:03-5822-5971
プログラムなど詳細
問い合わせ先 日本外科感染症学会特別セミナー事務局
(メディカルトリビューン内)
TEL:03-3239-7273
E-mail:jssi-seminar@medical-tribune.co.jp

Q&A(大毛宏喜先生)

〈質問〉創閉鎖の際テープ材は有効ですか?
(解答)テープ材は創閉鎖部にかかる緊張を緩和させ,ケロイド形成を予防させる効果があると言われています.一方で創感染の診断目的に,創の触診や視診をする上で支障になる可能性もあります.ですから創感染の発症頻度が低い術式では使用し,下部消化管手術のような感染頻度が高い術式では使用しないなどの使い分けが必要と考えます.
〈質問〉術後腹腔内膿瘍での抗菌薬投与期間は?
(解答)ドレナージ可能な症例では,抗菌薬の投与期間は1週間以内が一般的だと思います.解熱し白血球数が改善すれば中止しています.CRPの陰性化を待つ必要はありません.ドレナージ後も炎症反応の改善が遅れる場合は使用している抗菌薬の妥当性やドレナージ不良の検討が必要です.

第五回日本外科感染症学会特別セミナー in Sapporo

名称 知って得する感染症~外科感染症のUp To date2014~
日時 平成26年8月2日(土)15時00分~18時00分(受付開始14時00分)
会場 ホテルさっぽろ芸文館 3F「瑞雪の間」
札幌市中央区北1条西12丁目
TEL:011-231-9551
プログラムなど詳細 お申し込み
問い合わせ先 日本外科感染症学会特別セミナー事務局
(メディカルトリビューン内)
TEL:03-3239-7273
E-mail:jssi-seminar@medical-tribune.co.jp

Q&A(大久保先生)

〈質問〉SUDの再使用が出来ないとすると、医薬材料費は今後値上げの方向で、見直しする政策はとられるのでしょうか?
(解答)政策については分かりません。製品を単回使用品(SUD)とするかどうかの判断がメーカーに任されている点が問題です。使用者側の意見も取り入れて決める必要があります。さらに、再滅菌する場合の滅菌技術を高める工夫も必要です。
〈質問〉鏡視下手術時のLCS、LigaSURE等のコストが実費で保険適応となるように働きかけて欲しいです。
(解答)関連学会である日本医療機器学会、日本手術医学会と共同で外保連を通じて働きかけてみたいと思います。
〈質問〉速乾式アルコール製剤には生体消毒液が入っているものと入っていないものがあるが、どう違うのか、またどう使い分けるのでしょうか?
(解答)生体消毒薬の配合は持続効果を期待したものです。現実的には手指衛生などにおいて特に殺菌効果の差はありませんが、手術時手洗い(ラビング)に使用する場合には「持続殺菌効果」が求められています。
〈質問〉手術野の消毒にクロルヘキシジンアルコールを使用していますが、ポビドンヨードですか?
(解答)手術野の皮膚消毒には消毒範囲が分かり易いという理由でポビドンヨードが多用されていますが、色付きのクロルヘキシジンもあります。生体消毒薬にアルコールが配合されたものが効果的です。クロルヘキシジンアルコール、ポビドンヨードアルコールなどの製品があります。前者は持続殺菌効果も期待できます。ただし、眼、鼻、耳および粘膜の消毒にはクロルヘキシジンは使用できません。
〈質問〉ポビドンヨードの留意点として、「乾燥させる前に塗ると皮膚炎をおこしやすい」とのことであったが、溶液ではなく、ポビドンヨードゲル製剤についてはどのように考えたらよいでしょうか?
(解答)ポビドンヨードゲルは長期間皮膚に接触する製剤として作られていますので、皮膚炎の心配は少ないです。むしろ皮膚が軟化することがあります。カテーテル刺入部にゲルを塗布することは否定されています。(透析用のカテーテル刺入部では塗布効果が報告されています)

Q&A(針原先生)

〈質問〉血糖値コントロールでSSIが減少する理由は?またそのコントロール方法の推奨を教えてください。
(解答)病棟では基本的にスライディングスケールを用いたインスリン皮下注によるコントロールです。ICUではインスリン持続点滴の場合とスライディングスケールを用いたインスリン皮下注の場合があります。血糖値が高くて、しっかりとしたコントロールが必要な場合にはインスリン持続点滴となります。なお、血糖値が高いと好中球の貧食能が障害されるため、SSI発生率が高くなると説明されています。
〈質問〉皮下洗浄法では、どのくらいの水の量で洗浄するのが望ましいでしょうか?
(解答)皮下洗浄に使用する生食の量は500ml程度です。手袋でかるく擦過しながら、洗浄をしています。洗浄水が周りに垂れ込まないように、工夫して洗浄する必要があります。
〈質問〉SSI対策の視点から、ペンローズドレーン等の開放式ドレーンの留置は問題があるのでしょうか?
(解答)明らかな逆行性感染はSSIには含まれません。スタッフの手を介した交差感染が原因と考えられるからです。開放式ドレーンは高率に逆行性感染を起こすので、長期留置はお勧めできませんが、短期の留置ならば、容認される場合もあります。

Q&A(畑先生)

〈質問〉局所の軟膏などの抗菌薬はドラフトでは”Do not apply”とありましたが,毛髪を剃毛しないで行う開頭術の閉創直後の創に対しては如何でしょうか.
(解答)緊急の開頭手術では術前の準備が不十分なこともありますが,毛髪に関しては緊急・定期に関わらず,術直前に必要部分のみ除毛(サージカルクリッパーなど)し,消毒を行うのが良いと思われます.閉創直後の創部に局所の抗菌薬を使用することの有用性は認められていないと考えます.
〈質問〉予防抗菌薬の投与タイミングは,投与開始あるいは終了時のどちらをさしているのか.
(解答)執刀から60分以内に投与を開始し,執刀時に組織内の抗菌薬濃度が十分に高まっているように,執刀時には投与が終わっていることが望ましいと考えます.また,バンコマイシンを投与する場合は,投与時間に1時間以上必要なため,執刀の120~60分前に投与(開始し執刀までに終了)することが勧められています.
〈質問〉腎機能低下患者への予防投与の初回投与量は腎機能正常者と同量で良いのでしょうか.
(解答)腎機能低下により抗菌薬の代謝が影響を受ける場合は,初回投与量は正常者と同量に投与し,追加投与のタイミングを腎機能に応じて遅らせるのがよいと考えます.
〈質問〉術前の監視培養はルーチンに必要か?
(解答)ルーチンに監視培養を行うことは不要と考えます.講演に内容に関して,MRSAの鼻腔のスクリーニングにおいても,MRSAを保菌していることの診断を培養で行うのか,分子生物学的な検査を行うのかなど,有効性の定まった方法がなく,除菌の方法についても同様に定まっていませんので,ルーチンに行う必要はありません.

Q&A(大毛先生)

〈質問〉ワーファリン使用中の症例で,C. difficile感染症に対しバンコマイシン散を使用したところ,INRが上昇しました.対処法を教えて下さい
(解答)バンコマイシン使用時はワーファリンの作用が増強される場合があります.ワーファリンの投与量を調節してください.メトロニダゾールの内服でも同様にワーファリンの効果が増強します.
〈質問〉培養検査で真菌を検出した場合,保菌か感染かの判断はどうすればいいですか
(解答)真菌の菌数,感染所見,血清学的診断など総合的に判断する必要があります.喀痰検体での検出を見かけますが,多くは口腔内真菌の混入であることに注意して下さい.

第四回日本外科感染症学会特別セミナー in Fukuoka

名称 知って得する感染症~外科感染症のUp To date2014~
日時 平成26年7月19日(土)15時00分~18時00分(受付開始14時00分)
会場 アクロス福岡 地下2F イベントホール
福岡市中央区天神1-1-1
TEL:092-725-9111
プログラムなど詳細 お申し込み
問い合わせ先 日本外科感染症学会特別セミナー事務局
(メディカルトリビューン内)
TEL:03-3239-7273
E-mail:jssi-seminar@medical-tribune.co.jp

Q&A(大久保先生)

〈質問〉術野消毒の際、イソジンによるブラッシングの是非はいかがでしょうか?
(解答)消毒薬において、泡の出るスクラブ剤を術野消毒に使用してブラッシングすることはお勧めできません。
皮膚に傷がつくことがあります。汚れを落とす目的で通常の消毒の前にエタノールで汚染を除去しておく方法があります。
〈質問〉単独での術野の消毒に用いるとしたらどの消毒薬が良いのでしょうか?
(解答)術野皮膚消毒はポビドンヨード、クロルヘキシジンが推奨されます。丁寧に時間をかけて塗布してください。アルコールが配合された製剤はさらにスペクトルが拡大して消毒効果が高まります。ただし、アルコール配合剤は引火性に留意してください。粘膜および頭部顔面の手術および新生児の手術ではクロルヘキシジンは推奨できません。
〈質問〉クロルヘキシジンスクラブ等による術前シャワー浴の有用性について教えてください。
(解答)クロルヘキシジンによる術前のシャワー浴は、皮膚の細菌数を減少させることが確認されており推奨されています。しかし、それによる手術部位感染が減少したというエビデンスは乏しい現状です。さらに、クロルヘキシジンは目、耳、鼻に対しては毒性があることに留意してください。
〈質問〉サイズ等の変更で使用していないシーツやCVなどの減菌は行うべきでしょうか?
(解答)単回使用器材において、開封したにもかかわらず使用しなかった器材(open but unused: OBU)の場合の再滅菌の可否については世界的に話題となっています。少なくとも。放射線滅菌した非耐熱性器材を酸化エチレンガス滅菌した場合には毒性の高いエチルクロルヒドリンなどが生成されます。従いまして医療現場におけるOBUの再滅菌の適切な方法はありません。
〈質問〉粘膜(口腔)の手術前消毒に適した消毒剤は何でしょうか?
(解答)粘膜の消毒に適した消毒薬はポビドンヨードです。しかし、構造的に十分な殺菌はできません。粘膜の清浄化は、水による十分な洗浄が必要です。したがって、口腔内の手術においては術後に抗菌薬を使用することで対応することが望まれます。

Q&A(針原先生)

〈質問〉ラビング法導入に関して:人工物埋込手術を理由に一部の医師から反対があるのですが、導入前後で変化などありましたでしょうか?
(解答)NTT関東病院では術前手洗いはラビング法、スクラブ法どちらでもよいことになっています。ラビング法の導入に当たり、ビデオを作成して、ラビング手技の統一化を図り、さらに自施設の症例検討でラビング法とスクラブ法でSSI発生率に差のないことを証明しました。
〈質問〉消化器手術における不潔操作後の手袋交換のタイミングはいつがよいのでしょうか?
(解答)術中の手袋交換のタイミングは、1)不潔操作終了後(消化管吻合後など)、2)腹腔内洗浄施行前、3)2時間ごとを原則にしています。手袋は使用時間が長くなると、高頻度に破損することが明らかとされています。
〈質問〉SSI防止対策における水道水による手術時手洗いとはどういう意味でしょうか?
(解答)手術時手洗いの目的は、105-6個ほど手に付着している細菌を、102-3個ほどまで減少させ、手袋が破損した場合の術野の汚染を最小限とすることです。その目的のためには滅菌水でなく、水道水でも十分なことが証明されています。また滅菌水は配管を通して、蛇口から供給すると、汚染されやすく、かえって塩素を含んだ水道水の方が汚染が少ないとのデータもあります。
〈質問〉精度の高いSSIサーベイランスを行うコツを教えてください。
(解答)外科医だけでSSIサーベイランスを継続的に行っていくのは困難なので、感染対策チーム(ICNやICDなど)と協力して行うことをお勧めします。SSIの判定およびフィードバックのカンファレンスを月に1回程度開催し、外科医と感染対策チームで検討することも有用と考えています。
〈質問〉術前の除毛(脱毛)か剃毛か、またそのタイミングは?
(解答)健常な皮膚が感染に対して最も抵抗力があります。どんなに上手な人が剃毛しても皮膚の表面に小さな傷がつき、感染の原因となります。以上が除毛を勧める理由です。除毛ならば、手術室ではなく、病室で行ってもよいと考えます。なお、過敏性がないならば、除毛クリームを使用することも問題ありません。

Q&A(畑先生)

〈質問〉胃全摘・肝切除・直腸手術の本学会の臨床試験で、術後帰室後から術後24時間の間、抗菌薬は3時間毎で投与するのでしょうか?
(解答)本学会の臨床試験では、胃全摘・肝切除において、術直前と術中の3時間ごとの追加投与に加えて、術後6時間後と、術後およそ18~24時間に1回の投与としています。直腸手術に関しては、術後24時間投与での非劣性が証明されませんでした。対照となっている3日投与群では、術後6時間後に加えて、術翌日以降3日目まで2回/日(12h毎)の投与がなされています。
〈質問〉不潔や感染手術でも、予防的抗菌薬の投与として、術中~24時間で抗菌薬は中止するのが宜しいのでしょうか?
(解答)Dirty/Infected(不潔/感染)に分類される手術では、抗菌薬は予防的投与ではなく治療的投与として使用する必要があります。そのため、抗菌薬は、感染に対する治療が終わるまで使用することになります。
〈質問〉整形の手術で人工物を入れる際にVCMの塗布を行うとSSIを予防できるという論文に基づいて当院では、現在創部にVCMを塗布しているが、今のところCDCガイドラインでは推奨されていないということか?
(解答)創部などの局所に抗菌薬を散布あるいは塗布することに対する有効性は明らかになっておらず、ASHP等のガイドライン、NICEガイドライン、CDCガイドラインドラフトでも現在のところ推奨されていません。
〈質問〉食道癌の手術の場合、10時間程度の侵襲の大きな手術となりますが、術後どれくらいの期間の投与が推奨されているのでしょうか?
(解答)周術期の予防的投与については、侵襲の大きな手術であっても、術後に予防投与を継続することの有効性は明らかになっておらず、CDCのガイドライン等では、他の手術と同様に術直前と術中のみの投与が推奨されています。

Q&A(大毛先生)

〈質問〉真菌感染症でempiricにミカファンギンを開始して,C. albicansと判明した場合,アゾール系への変更が必要ですか
(解答)アゾール系のフルコナゾールはローディングが必要で,有効血中濃度に達するまでタイムラグができます.一旦ミカファンギンで開始していれば,継続で差し支えないと考えます.
〈質問〉腹腔内膿瘍を保存的に治療する場合,カルバペネム系薬の長期投与を要する場合があります.何かいい方法はないでしょうか
(解答)壊死性膵炎後の感染など,複数回のドレナージを要する場合があります.抗菌薬の効果が不十分な時は,CT検査の再検でドレナージ可能な部位がないか評価して下さい.

過去のセミナー

当日のプログラム、Q&Aなどを掲載しております。


平成26年2月22日(土)
名古屋国際センター「ホール別棟」
第三回日本外科感染症学会特別セミナー in Nagoya
知って得する感染症~外科感染症のUp To date2014~

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平成25年9月28日(土)
大阪国際会議場 3階
第二回日本外科感染症学会特別セミナー in Osaka
知って得する感染症~外科感染症のUp To date2013~

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平成25年6月1日(土)
砂防会館 別館 (東京)
日本外科感染症学会特別セミナー in Tokyo
知って得する感染症~外科感染症のUp To date2013~

詳細

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