日本外科感染症学会

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外科周術期感染管理医認定制度

 第21回日本外科感染症学会において、外科周術期感染管理認定医制度検討委員会は理事会、評議員会および総会に外科周術期感染管理に関する知識および技術の向上と普及を目的とした外科周術期感染管理医認定制度の設立を提案し、承認された。
上記の目的のために、外科周術期感染管理医認定制度委員会が発足し、外科周術期の病態や対策に関する教育・指導的立場の医師と実践的立場の医師、すなわち外科周術期感染管理教育医と管理医の認定制度ならびに教育施設の認定制度を創設することを決定した。
今後、本委員会および教育委員会が協力して本制度における教育カリキュラム、教育セミナーを作成・運用することとした。

外科周術期感染管理医認定制度委員会

理事長挨拶

「外科周術期感染管理認定医・教育医、教育施設認定制度(認定医制度)」の発足にあたって

日本外科感染症学会理事長 炭山嘉伸

 本学会の前身である日本外科感染症研究会の第1回学術集会は、昭和63年(1988年)12月、全国の外科感染症の専門家が集まり、名古屋市で開催された。術後感染症の予防、多臓器不全と感染症という大きなテーマを中心に54題の演題が集まり活発な討論がなされた。研究会は平成14年11月、第15回の研究会開催を最後に日本外科感染症学会へと発展的改組を行い、翌年、第16回日本外科感染症学会総会学術集会として開催した。以降、ICD講習会を同時に開催し、院内感染対策を実践するICDの育成に力を入れる(2008年現在、当学会推薦ICD認定累積人数:433名)。翌平成16年9月、機関紙である「日本外科感染症学会雑誌」を創刊した。平成20年11月、初めて北海道で開催した第21回総会で、本学会の定款や会則で謳った「周術期医療の質と安全を向上させることにより、患者及びその家族に対する社会的責務を果たす」を、遍く全国で実践すべきとの会員の声を反映させ、かつ個人のみならず施設における外科周術期感染管理の充実を図るものとして「外科周術期感染管理医認定制度委員会」を発足させ、所謂「認定医制度」について検討を始めた。3年間の議論を経て、最終的に会員を含めた多くの先生方のご意見を反映させるべくパブリック・オピニオンを聴取し、さらに検討を重ねた。頂いたパブリック・オピニオンは我々が熟慮した部分でもあり、回答は現時点の我々の考えでもある。
複雑化し、深化した現在の外科臨床では、外科治療の成績を左右する周術期の感染症対策は極めて重要である。研究会の発足当初は、術後感染予防、重症感染症の治療、MRSA感染症対策等が中心的な話題であったが、MRSA感染症が社会問題化すると同時にその病態や背景を探る臨床的・基礎的研究が相次ぎ、派生的に薬剤耐性菌発生メカニズムの解析と治療戦略、予防・治療抗菌薬の適正使用法、周術期感染予防対策の実践とその成績、臓器別手術部位感染の特徴、ICTの組織化と活発な活動、サーベイランスの実施と分析、宿主の栄養や生体反応からみた外科感染症の解析、創傷治癒とSSI、エンドトキシンや血液浄化療法、重症感染症や重症敗血症克服への挑戦、臓器移植と感染症、感染対策の費用対効果などが学会や誌上に報告され、会員の外科周術期感染管理に関する専門的知識や技術の向上に大いに役立っていることから、その普及を図ることが重要であり急務であると考えていた。
このような背景から、周術期感染管理や救急医療のスペシャリストの多い本学会を、周術期感染管理の知識と技術の向上のみならず研究の飛躍の場として、さらには普及の発信元として、「規則第1条:外科周術期感染管理に関する専門的知識および技術の向上と普及を図るために、本制度を設ける」と掲げ、認定医の資格を「外科系あるいは救急系の基盤学会の専門医であること」と明確化した。一方、本制度を実践的で実のあるものにするために、学術集会での指定講演、講演会の開催、本学会の「教育委員会」を始め「ガイドライン作成委員会」や「医療の質・安全委員会」などと連携したテキスト作成なども行う予定である。本学会の認定医は素晴らしいと言われるような人材を育成する所存である。

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本制度に関するパブリックコメントの募集とその回答

 本制度についての周知徹底と、多くの会員等からのさらなるご意見の収集を図った後に本制度を発足させるべきとの考えのもと、本制度委員会として、制度の詳細を学会ホームページと学会誌に掲載するとともに、平成23年3月末日までに本制度に関して広くパブリックコメントを募集し、ご意見の内容を理事会に諮った後に、本制度を確定することとした。
その結果、頂いたコメント(匿名化)とそれに対する回答は、以下の通りである。

【回答】外科周術期感染管理医認定制度委員会
担当理事 古川清憲
委員長  久保正二

パブコメ1

認定制度委員会 御中

今回の制度発足に関する規則を拝見させていただきました。現在地方の市中病院に常勤し、今年ICDを取得した外科医です。以前から認定医の公示があったため興味を持って見ていました。規則によりますと、認定医を取得するためには認定施設に常勤し、そこには教育医がいなければならない。教育医は暫定医として評議員がなれる。つまり、少なくとも外科感染症学会の評議員が在籍していなければ取得できないようです。評議員はホームページで見る限り140名前後いらっしゃいますがざっと見たところ偉い先生方が名を連ねております。多くが大学病院、専門病院に在籍され、病院が重複されている例もあると思われます。私どもの病院に評議員の先生が赴任してくるとは思えません。新規教育医が出来るのはどんなに早くても28年度。その先生の誰かが私どもの病院に赴任する可能性も高いとは思えません。私のような立場の場合、認定医取得は最初から考えない方がよいでしょうか?都会、大学中心の規則に、感染制御に対するモチベーションが少し低下してしまった地方の外科医より。

→回答
本制度は、個人のみならず施設(診療部)における外科周術期感染管理の充実にも力点を置いております。すなわち、本制度の発足当初は、教育医と教育施設が存在しないため、まずは暫定教育医を認定し、次に教育施設を認定します。暫定教育医は、規約にありますように(1)基盤学会の専門医(含指導医)、(2)ICDの取得、(3)外科周術期感染管理の実践と指導のほか、本学会の評議員あるいは評議員申請資格((1)満67歳未満の正会員、(2)連続3年以上の会員歴、(3)一定の業績を有する、(4)評議員2名の推薦、(5)その他)を有することができれば申請可能です。したがって、現時点で、積極的に外科周術期感染管理に携り、会員歴があり、一定の業績を持っておられる先生方は、その先生自身が暫定教育医を申請されることにより、認定医の取得および認定施設への申請が可能となります。なお、評議員2名の推薦に関して学会本部にその旨を連絡してください。

パブコメ2

日本外科感染症学会「認定制度」委員会御中

私は○○医科大学で感染制御部に所属している○○と申します。
私自身は感染症専門医で、総合内科専門医ですが、大学では感染管理全般の仕事を行っており、この中では、周術期管理も含まれます。外科での研修も行い、現在でも週に数例のシャント造設術なども行っております。また、FCCS(Fundamental Critical care Support)のインストラクタでありJATECプロバイダも取得しており、集中治療領域にも積極的に関与しております。外科感染症学会にも積極的に参加しております。
今回の外科周術期管理認定医、教育医の立ち上げは非常に貴重な制度であると考えますが、同時に、感染症内科など内科系の医師でも、周術期に精通したものもおり、この制度は、そういうものに対して門戸を開くものであるべきであると思います。
日本感染症学会の認定する感染症専門医は、過去は内科、小児科に限定した資格でありましたが、外科領域など基礎領域の専門医まで資格者の範囲を広げております。
以上の見地から、どこの専門医でもいいというのは問題だと思うのですが、「感染症専門医でICDを取得しており、外科周術期管理に携わっているもの」という要件を是非追加していただきたいと思います。

→回答
本制度の発足にあたって、第1章総則の第1条に「外科周術期感染管理に関する専門的知識および技術の向上と普及を図るために、本制度を設ける」と掲げました。外科周術期に特化し、本学会の基盤となっている外科系と救急医学系以外の、耳鼻科、整形外科、泌尿器科、婦人科、脳神経外科領域などの周術期感染管理についても議論し、一方で、認定医や教育医の条件について議論してまいりました。これらの点について、現時点では未だ確定的でないところがあります。また、本学会での発表や論文発表において、当初はほとんどが外科系あるいは救急系でありましたが、最近では感染制御部の方など、徐々にその範囲が広がりつつある現状も認識しております。外科周術期感染管理の知識や技術の到達目標の設定など、これからもその範囲について検討することとなっておりますが、本制度の発足にあたっては「外科系あるいは救急系の基盤学会の専門医(含指導医)であること」と明確な領域と基盤学会の専門医の資格を有するところより開始することにいたしました。本制度にのった認定の充実を図りながら、将来的には他領域に門戸を広げることも考慮に入れております。

パブコメ3

外科周術期感染管理認定医・教育医認定制度パブリックコメント

 やはり筆記試験は行った方がよいと思う(おそらく委員会でも筆記試験をするかどうかを検討したと思うが)。セミナーなどの参加によって認定しても本当に外科感染症に関する知識があるとは思えない。第三者から見ても参加だけで取った資格(居眠りしていても、代返してもらっても、義理で共同著者にしてもらっても取れる資格、お金を出せば取れる資格)よりも、試験を受けて取った資格の方が信頼性は高いと思う。標榜できるような専門医制度は考えていないとは思うが、名ばかりの認定医が何千人いるよりは、本当に実力のある認定医が数百人いるほうがよいと思う。筆記試験も合格ライン、合格率を明示し、過去問も公表するようにして認定医としてどの程度の知識レベルが必要とされるかを説明したほうがよいと思う。
またインターネットが普及した現在、e-learningによるセミナーも検討してほしい。

→回答
本制度を実際的で実のあるものにするために、現在なお様々な検討を重ねております。ご指摘の通り、当初は専門医制度の検討も致しました。本学会の定款にもあるように、「周術期医療(手術前~中~後)の質と安全を高めていくことにより、患者さまやご家族の皆様に対する社会的責務を果たしていくことを目的としています」。そのためには、実践的であるべきで、目に見える活動(細則2;要証明書)も認定の条件とさせていただきました。まさに、外科周術期感染管理についての知識と実践を、調和を図りながら、多くの先生方と情報を共有し、最新の知識や技術をいかにお届けするか根気のいる困難な問題であると認識をしております。この点につきまして、現在のところ、学術セミナーや指定講演の開催、到達目標の設定、ガイドラインの設定、e-learningなど、本学会の教育委員会、ガイドライン作成委員会、医療の質・安全委員会、本制度委員会の先生方において話し合いを始めさせていただいております。あくまで、実践的活動ができる人材を養成する方針であり、現在のところ筆記試験を予定しておりませんが、テキスト、セミナー、講演などの充実を図りながら、将来的には認定申請時に筆記試験の実施を視野に入れてもよいと考えております。いずれにせよ本学会の認定医は素晴らしいといわれるような人材育成カリキュラムを考えております。

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